2009年9月8日火曜日

終の住処(ついのすみか)

第141回芥川賞受賞作品:磯崎憲一郎 著

この作品が、今回の受賞と聞いたときから読みたいとう衝動にかられ、楽しみに手にして読んだ。
なんだか読んでいる間中、腑に落ちない違和感で、気持ち悪い感覚につきまとわれた。

純文学と謳っていながら、遠藤周作のような品格も読後の余韻も感じさせない不可解な不思議さだ。

ごく普通の線の細い目立たないサラリーマンが、恋愛と言えるほどの付き合いもなく結婚し、愛情もお互い感じあうことなく夫婦という単位になり、子どもを成しながら11年間も口をきかなくなったりという背中が寒いような、冷たいコンクリートの箱の中のような小説だ。

読み終えても、虚無感だけが際立つ作品で、まったく理解ができない。
これが受賞作? 読者はみな、分かって面白いと思っているのかすごく疑問?

よく売れていると聞く。なんだか評論で褒めている人もいる。
私のように受賞作なので読みたいと思って買った結果、がっかりしている人も多いのではないかな。
言わばオカルト映画を観たあとと、同じ感覚なのだ。

この作品を受賞させるというのは、どういうこと? どこが優れているの?
ほかにいいのが無かったの? だったら該当無しでいいのにと、どんどん疑問が湧いてくる。

ただ、最近普通に電車に乗っていても、この読後の感触と同じ空気を感じる光景がままある。
どこか薄ら寒い印象を受けるフツーの人々の「傍若無人」の我さえよけりゃの行為。
見てみぬ振りをさせられる言い表し難い、違和感や絶望感。

ということは、現代社会のフツーの人々には合っていて、違和感の無い作品???

磯崎氏のほかの作品を読んでみないと、作者の意図もよく分からない。

そうか、映画にもなった「蛇にピアス」という同じように芥川賞受賞作品もあったなあ。
映画なんざー絶対見たくない。 おぞましい。

文学は例え100年経っても、後世の人が読んでも崇高とまでは行かなくとも、心に人生の示唆を与えるような作品が望ましいと思うのだけど、時代の趨勢なのかなあ。 
疑問が尽きない受賞作でした。

1 件のコメント:

  1. タイトルからして、期待をしていない受賞作だと思っていました。選考委員の石原知事の書評でも、これはダメだと でも気になりパラパラ見たが、やっぱりと思い 読むのをやめた作品です。
    近頃の受賞作は軽すぎる

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